書籍紹介1:鈍感な世界に生きる 敏感な人たち
最近読んだ本で、特に興味深い本に出会ったので紹介したいと思います。
鈍感な世界に生きる 敏感な人たち
イルセ・サン (著), 枇谷 玲子 (翻訳)
日頃感じる生きづらさについて~自分だけの感覚か?~
さて、なぜこの本に感銘を受けたかについて書く前に、まず僕が以前から感じていた生きづらさについて書こうと思います。
僕は、長時間人と話していると、突然ぐったりしてしまうことが良くあります。
例えば大勢の友人と食事に行ったとき。
最初は楽しく人と会話できているものの、突然、糸が切れたかのように集中力が切れ、会話の内容が頭に入ってこない、発言する気がなくなる、帰りたい…といった心境に陥ることがあります。これは相手との親密度に関わらずなります、もちろん仲が良い人ほどなりにくいのですが。
知り合いの中では僕が突然不機嫌になった、と感じたことがあるかもしれませんが、不機嫌になったというよりどっと疲れたのです。
最近特にこれを実感するのは研究室での生活です。
研究室は多くの学生や教員と同じ部屋で生活しているわけですが、もう、夕方にはぐったりと疲れてしまうことが多いです。こうなると一切の知的活動ができなくなるので、心の中で「帰りてえぇぇ」と無限に唱えるターンです。
もうひとつ、すぐ隣に他人がいる環境でのデスクワークが、びっくりするほどはかどらないのです。
デスクワークというのはPCで書類作成をしたり英語論文を読んだりすることですが、すぐ近くに人がいると、やる気にならない、頭が働かないで作業が全くはかどらないのです。結局これらは家に持ち帰って一人でやります。家で一人で作業するときは一変、ゆったりとした気持ちで比較的効率的に進めることができます。
他人が近くにいる環境では、自分のペースでゆっくり作業を進めることができないのです。ああなんと悲しいかな。思えば受験勉強なども、まったく音がしない静かな図書館などでやり、例えば家のテレビが着いたリビングなどでは全く集中できませんでした。
あと、他人の行動が無駄に気になったり、他人に何か言われることを過度に恐れてしまうような傾向があり、それが自分の行動を制限しているような感じはしていました。このために無駄にストレスを感じてしまう、うまくストレスを発散できないといった状況を自覚していました。
で、これは日々生活していくうえでこの上ない障害であり、何とかならないかと思っていました。かつこのような感じはあまり他人に理解されない、というか他の人は僕みたいに疲れたりしないようでした。そのギャップに悩んでいました。
本との出会い
さて、そんな中、何気なく本屋さんに立ち寄ったときに平積みにされていた本。なんだか引き込まれる表紙とタイトル。何気なく手に取り前書きや目次を読み進めるうちに、これは買わねばならないと確信した本。衝撃的な出会いでした。
それが今回紹介する本になります。
鈍感な世界に生きる 敏感な人たち:イルセ・サン
この本は、
HSP (Highly Sensitive Person)
という、海外で最近少しずつ認知されている精神的気質について説明した本です。HSPは日本語にすると「非常に敏感な人」となります。
HSPと自分
このHSPというのは、
・音、光、においなど周りの刺激に敏感に反応してしまう
・しばしば内向的で、対人関係において相手からの影響を受けやすい
・繊細で物事の変化によく気がつく、傷つきやすい
などの特徴を持つ人を言うらしいです。
HSPについては以下のブログが詳しいです。
で、この本に書いてあること、すなわちHSPな人の特徴、思考回路、日々感じる困難などですが、これらが見事に自分に当てはまっているのです!!
完全に私の内面を読み取って文章化した本のようです。
俗にいう「まワ晒」です。
特に共感した点を挙げてみます。
- 人と長時間しゃべっているとぐったり疲れる
- 不快なにおいや音に気にせずにいられない
- 先のことを考えすぎて常に不安を抱えている
- 共感力が高いため、他人が怒られているのを見ていると自分が怒られたように感じて気が滅入る、また自分の怒りをうまく放出できない
- 「~しなければならない」「~であるべきだ」といったルールを課してしまい、それに反する事象に遭遇するとネガティブになりがち
……ワイやんけ!!
本を読み進めていくたび何度もびっくりしました。
自分だけの感覚だと思っていた日頃の生きづらさが全部ここに書いてある、まるで自分の頭の中がハックされたかのように!
なぜこの本に感銘を受けたのか
で、HSPの気質に自分が当てはまるとして、なぜそこまでこの本に感銘を受けているかというと、HSPという特性を知ることで、先述した自分の「ダメなところ」が、
ただ自分が弱い、なまけがちだ、社会不適合である
といった理由に起因するものだと考え自己否定に走っていた中、そうではなく、
HSPという生まれつきの精神的な気質のためである
と認めることができたからです。
これだけ見ると何も解決していないように思うかもしれませんが、もうこれ以上「自分はダメな人間なんだ」と嫌悪する必要がなくなり、「自分はこういうタイプの人なんだ、しょうがないんだ」と容認するのです。
このとき、自分の心にこびりついていた重りがいくらか外れて、ずいぶん楽になれた気がしました。もう自分を責めなくても良いと。
HSPな自分が日々の生活でどのようなことに気をつければ良いかというのもこの本に書いています。その中に、「周囲の人に自分がHSPであることを伝える」という記述がありました。なるほど自分の気質について他人に話すのは一見勇気がいることのように思えますが、逆にはっきり伝えておくというのは確かに効果的です(だからこうしてブログに書こうと思ったわけです)。
また「休憩や散会の時間を約束しておく」というのがあっておもしろいなと思いました。なぜならこれは常日頃から自分でも思っていたからです。どんなに楽しい飲み会でもあるとき急に疲れて面白くなくなり不機嫌になって帰ることがあるので、早めに切り上げる必要性を感じたことが多々あります。
その他にも様々な対策が書いてありましたが詳しくは本書をお読みください。
関連書籍
現在HSPに関する書籍がどんどん出版されているように思います(書店に行くとHSP関連の本がまとめて平積みされていたりするのを見ます)。社会的な認知度が広まっていると同時に多くの人の関心を集めている結果だと思われます。
HSPに関する書籍で読んだ本が他にもあるのでメモします。
「敏感すぎる自分」を好きになれる本:長沼睦雄
日本でHSPを研究する数少ない日本人研究者の著書です。
HSPについての理解を深めるために購入しました。
本の内容や伝えたいことは「鈍感な世界に生きる 敏感な人たち」とほぼ同じでした。
こちらの本は敏感な人が陥りやすい困った事例とその解決策が具体的に多く取り上げられておりおもしろかったです。
敏感にもほどがある:高橋敦
この本は、HSPである著者が自身の出来事をもとに描いた四コマ漫画のエッセイで、同時にHSPがどのような特徴であるかをわかりやすく解説しています。
「ああ~わかる~!!」の連続で、立ち読みだったのですが(すみません…)ノンストップで読んでしまいました。HSPについて軽く知りたい人には特におすすめの書籍です。
まとめ
私はこの本を読んで、自分がずっと抱えていた悩み、かつ自分しかわからないと思っていた感覚的な悩みは他人より敏感であるというHSP気質からくるもので、他にも同じような生きづらさを感じている人はたくさんいるのだと知ることができました。それによっていくらか心が軽くなりました。この本に出会えてよかったです。
思えばぼくの周りにも、HSP気質っぽい人は結構いるように感じました。
その人にとって、この本を読むと心がすっと軽くなるような感覚を覚えるだろうと思います。世の中に生きづらさを感じる人はHSPの可能性があるので、是非読んでも手欲しい本です。
HSPがより一層社会的認知を得て広く理解されることを望んでいます。